まもれ!マイお宝!誰でもできるトレカ泥棒対策
子どもから大人まで世界中で楽しまれている「トレーディングカード」、略して「トレカ」は、昨今急激に中古売買価格が高騰しています。数千、数万円のカードは当たり前で、世界に〇枚などの希少価値が高いプレミアカードは1枚数億円になることもあります。
トレカの正規価格は1パック200円程度、1枚換算で数十円。上手くいけば安く手に入れたカードが多額の利益を生み出すため、トレカに一切興味は無いけどお金儲けの為だけに「カード転売」や「カード投資家」をやる人が急増しています。
そんな混沌のトレカ時代にもう一つ増えたのが、高額なトレカを狙った窃盗、空き巣、強盗・・・つまり「カード泥棒」です。今の泥棒は宝石ではなく、カードを盗むのです。
今回は日本のトレカカルチャーの中心ともいえる、秋葉原で防犯ショップを営む当店が、なぜ今の泥棒はトレカを狙い盗むのか?被害に遭わないための対策を解説します。
なぜトレカが狙われる?
「カード泥棒」犯行の特徴は?
トレカ窃盗の手口
簡単にできる窃盗対策
カードショップは高級品店
泥棒はやってはいけないことは大前提ですが、高額で売買されているもの=盗むと高額な利益を見込める物品はトレカ以外にも数多くあります。現金、通帳、バッグ、財布、身分証、宝石、腕時計、自転車・自動車のパーツ・・・。
ではなぜ、わざわざトレカを狙うのでしょうか?それにははっきりとした理由があります。
トレカは1枚1枚が軽くて薄く、手ぶらでも簡単に持ち去ってしまうことができます。特に高値で売買されているカードは1万円札より高いため、盗みやすいのに利益を生み出しやすいという泥棒にとってはこの上ない品です。基本的に泥棒の共通認識は「ラクしてバレずに沢山稼ぐ」です。しかがってトレカは今の泥棒にとって「ラクして沢山稼ぐ」恰好の的と言えます。
昔から標的にされている高額商品は、元の価格=定価も高額でその希少性を示すシリアルナンバーが付いているものも多いです。しかし、トレカは定価が安いものをマニア間の付加価値によって何十、何百倍・・・にも高騰した品。もちろん封入率、レア度によって希少性は異なりますが、一部の超希少品を除き識別できる個体別のシリアルナンバーなどありません。そのため一度盗まれて別の人の手に渡ってしまうと、盗品か否かを証明する方法、証拠がなくなり、犯人や商品の足取りを特定しづらくなります。これも泥棒の「バレずに稼ぎたい」という認識に一致してしまっています。
トレカは性別問わず大人も子供も楽しむ一大ジャンルで、非常に流行しています。買い手が多く、売買のスピードが速いため、日にちを待たずに換金しやすいのが特徴です。
また、フリマアプリやネットオークションで売りやすいのも換金しやすさを加速させています。今や数多くのカードをがフリマアプリなどで売られていますので、そのなかで盗品かどうかは見極めることは極めて困難です。また、海外にも熱狂的なファンが非常に多いので売買ルートにも困りません。
さっさとお金にして自分の手元から離れれば・・・そのカードが手元に戻ってくる可能性は低いでしょう。トレカ人気を逆手に取られ、どの視点でも泥棒の希望に適してしまうのが現在のトレカ事情です。
トレカは昔からマニアの間では希少なカードをプレミア価格で売買されていましたが、普段カードで遊ばない金儲け目的の人にも知れ渡ったのはここ数年のことで、置いてある商品の価格や被害に対しての対策が追いついていません。また、趣味が高じて始めた個人商店も多く、セキュリティにかかる費用を捻出しづらい方も多いのではないでしょうか。
宝石や腕時計、バッグなどの高級品を扱っているお店や、銀行はセキュリティシステムへの加入はもちろん、防犯カメラの設置がされていたり、警備員が常駐している所も多くあります。
再三の通り、泥棒は「できるだけ手間がかからない」「バレて捕まりたくない」上でできるだけ多い金額を不正に稼ごうと考えます。同じくらい高価なものを盗むなら、宝石店や銀行などを狙うより、対策が甘く持ち運びが楽な方を狙いたがるのが泥棒の心理です。
セキュリティが万全ではないことに繋がりますが、一般によくあるカードショップは基本的に制限なく誰でも入れるため、泥棒も客を装って入店して気兼ねなく下見することができます。また、ショーケースで店員の視線が行き届かない場所もあるため、泥棒にとって、非常に下見しやすい場所と言えます。
泥棒は金品を盗んでお金を稼ぎたい犯罪者ですので、捕まってしまっては盗んでも意味がありません。ですので捕まらないために下見をして、「ラクに盗めるか」「どうやって盗むか」「どうやって逃げるか」「証拠は残りそうか」「捕まりそうにないか」「利益は得られそうか」などを考えて犯行に及びます。例外もありますが、基本、下見の時点でこれらのクリアできそうな店を狙います。
最近のトレカ窃盗は、ただ夜に侵入するだけではありません。思わず目を疑うような大胆な犯行手口も近年増えましたのでご紹介します。
夜間誰もいないときに侵入して盗む、いわゆる王道の空き巣です。泥棒の手口と言えばまっさきにイメージされますが、実際に夜間は目撃者が少ないため犯人の特定が難しく、カードは一度盗まれると行方を追いにくくなることから、泥棒にとっては誰もいない夜間は狙い時です。また、誰もいないのをいいことに持てるだけのカードを盗むという大胆な犯行もできるため、カード数万枚を盗まれ約3000万円相当の被害が発生した店舗もあります。
空き巣の大半はお構いなしに窓ガラスやドアを割って侵入します。さらにカードショップの場合はショーケースを割られるため、カード以外にも店内の修繕などで甚大な被害が出るのもこの手口の特徴です。
皆さんがイメージしている通り、人の目がない夜間は泥棒に取っては狙られやすく、大きな金銭被害が出やすいため、必ず対策をしましょう。
空き巣以外で多い手口は、営業中に店内に入り、ショーケースのカードを見せてもらうフリをしつつ隙を見て盗んで逃げるというものです。最近はこうした白昼堂々盗む手口が増えており、2024年3月になじみのある秋葉原のカードショップでも、カードを見せてもらうフリをし、隙をついて1枚500万円相当のカードを盗む事件がありました。
こうした手口の場合、本来であれば効果があるセキュリティシステムが機能しないため、セキュリティシステム以外の対策も取る必要があります。
ショーケースの中にカードを入れておけば安心かと思いきや、実は汎用型のショーケースはよく同じ鍵穴、同じ型番の鍵が使われていることが多くあります。つまりショーケースや鍵の型番が分かっていれば、他人でも合鍵を作成して勝手にショーケースを開けることができる可能性があるということです。
絵空事のような手口にも思えますが、こちらの手口も実際にとあるカードショップが営業中に合鍵でショーケースを開けられて、カードを盗まれる事件が起きています。
確かに一軒家や店舗といった建物の鍵は代わりがない固有のものですので、合鍵を作るのは難しいですが、ショーケースの合鍵は想像以上に作りやすいことを店側も認識する必要があります。
まだ防犯カメラを設置していない場合は、まずおすすめしたい対策です。防犯カメラをはコストが高い、設置工事に手間がかかるなどで敷居が高いと思われがちですが、比較的安価で個人でも設置できる物も数多くあります。
防犯カメラは万が一のときに証拠を残せるだけでなく、設置しているだけで泥棒に「ここで盗んだら証拠を撮られてしまう」と思わせて窃盗を未然に防止する効果もあります。
▼防犯カメラ設置のコツ
●泥棒を牽制するために目立つ場所に設置する
●壊されないように手に届かない場所に設置する
●防犯カメラの死角を生まないよう複数台設置する
コスト面などで防犯カメラの設置が難しい場合はダミーカメラの設置がおすすめです。ダミーカメラは撮影機能はありませんが、外見は防犯カメラにしか見えないため、本物の防犯カメラがあるかのように思い込ませて泥棒を牽制するのに期待できます。安価な防犯カメラよりもさらに安く、設置したら定期的なメンテナンスは必要がない非常に手軽な防犯商品です。
ただし、先述の通り撮影機能がないため、万が一窃盗が発生した場合は証拠が残りませんので、できる限り本物の防犯カメラと合わせて使うのがおすすめです。
防犯ステッカー、プレートは防犯意識のアピールになるだけでなく、防犯カメラやダミーカメラの存在をより分かりやすく知らせることができます。
可能であれば、見せかけだけでなく防犯カメラやダミーカメラに合わせて使うのがベストです。ステッカー単体でもあたかも防犯カメラがあるように思い込ませることができる効果がありますが、見渡したときにそれらしい物がなければ見せかけだと見破られてしまいます。あくまでも防犯カメラやダミーカメラをより目立つように貼る方が良いです。
商品を選ぶときは、店内に同化しない目立つデザイン、色を選びましょう。
盗まれると特に大きな損害が出るカードはできるだけ金庫に保管してください。1枚で何十、何百万円相当になる高額なカードはもはや宝石や現金入りのアタッシュケースと同じです。そう考えると、すぐに割れるガラスのショーケースに置くことがいかに無防備かが分かります。
カードの状態などを見てもらう必要があることもありますが、防犯的な観点で言えば、普段はダミーを置き、必要に応じて金庫から取り出すのがより適切です。
また、使用する金庫も簡単に持ち運べない業務用を使用しましょう。
高額なカードはお客にとっても高い買い物になるため、ダミーを展示していても見せてほしいと要望されることがあります。その場合、店員一人だけでは対応に限界があるため、店員複数人で対応する、別室を用意して対応する、警備員を雇う、それらを明確にルール化してSNSなどであらかじめ案内するなど、高級品店さながらの対応が必要になります。現在のカードショップでここまで対応している店舗はあまり見かけませんが、扱っているのはそれだけ価値があるものですので、その価値にふさわしい対応をしましょう。
ショーケースはガラスケースだけでなく、ポリカーボネートのタイプもあります。ポリカーボネートとは、耐衝撃、耐久に優れた頑丈なプラスチックで、成人男性がハンマーで叩いても割れにくい素材です。高強度でありながら透明度も高く、紫外線カット率は99.9%とまさにカードの展示にピッタリです。ポリカーボネートはその頑丈さから、身を守るための護身盾にも使われています。
また、合鍵が心配な場合は電子錠に変更できるショーケースもあり、さらにセキュリティを強化することができます。
▼ポリカーボネートを使用した盾
投資に使われるトレカはもはや高級品、貴金属と同じようなものです。
アナタのお店は、そうした高級品店のような防犯対策がいくつできていますか?
確かにトレカのなかには安いカードもありますが、50円のカードも3万枚盗めば150万円です。実際に3万枚盗まれた店がある以上、この数は絵空事ではありません。
泥棒にとってカードショップは「セキュリティが甘い銀行」「セキュリティが甘い高級品店」です。泥棒からすればこれほど「美味しい標的」は滅多にないでしょう。トレカの価格が一般に認知された今、カードショップはどの店も泥棒の標的になると思いましょう。
カードショップを経営している方、カードショップで働いている方、トレカが好きな方は、トレカ業界の未来を守るためにぜひ一度トレカの防犯について現状の見直しや本格的な対策を考えてみてください。